寮に到着し、自分に割り振られた部屋へと向かう。
ここ、七海学園高等学校の寮は男女ふたり部屋。一緒に住む相手と、三年間、パートナーとして暮らすことになる。
恵奈は部屋番号を見つけ、中に入る。そこにはすでに、パートナーが来ていた。
背の高い、すらっとした細身の男子だ。
彼は振り返り恵奈を見つけると、パッと明るい表情を浮かべた。
色素の薄い髪は短く整えられ、清潔感を漂わせる。丸い目と小さな八重歯が、人懐っこさを演出していた。
「君が俺のパートナー? よろしくね!」
「……よろしく、お願いします」
彼は恵奈に近づくと、パッと手を差し伸べてきた。どうやら握手を求めているようだ。
(明るくて社交的な人だなぁ。私とは大違い)
恵奈はおずおずと手を差し出す。すると、パートナーの彼は強くその手を握った。
「俺、浅利 圭吾! 君は?」
「入鹿 恵奈、です」
「恵奈ちゃんね! りょーかい! 三年間、仲良くやろうね」
圭吾はニッと歯を見せて笑いかける。
恵奈もぎこちなく口角を上げた。
「えっと、あの、手……」
つながったままの手が気になりはじめたとき。
軽快なチャイムの音が響いた。
『もうすぐ入学式が始まります。生徒のみなさんは……』
圭吾は「いよいよ入学式かぁ」と明るい声をあげ、パッと手を離した。
「じゃ、行こっか。恵奈ちゃん」
「あ、えっと。は、はい……」
恵奈は圭吾の勢いに押されるまま、体育館へと向かった。

