高くそびえる校舎の前に立った入鹿(いるか) 恵奈(えな)は、その豪華な建物をじっと見据える。
背中の真ん中あたりで切り揃えられた真っ黒なストレートヘアが風でなびいていた。

「ここが七海学園……」

彼女が見上げる校舎の中央には、大きなベルが飾られていて、そこはまるで結婚式場のようにも見える。

後ろからは、続々と彼女の同級生となる子たちが校舎へと入っていく。

みんな、いろんな夢を持ってここに集まったのだろう。けれど、恵奈の理由はそんな楽しいものではなかった。

「どうせ、運命の相手なんていないんだから」

そう吐き捨て、恵奈もまた校舎へと向かっていった。