モトコちゃんから指定された日付の、ある金曜日。

放課後になったので、空き教室へ向かった。

この空き教室は普段、英会話クラブという部活動が使っているらしい。

モトコちゃんは、英会話クラブという部活動をやっている。

詳しくないけど、週に数回くらいの、かなり緩い部活だった気がする。

恐る恐る、ゆっくりとドアを開けた。

『ミツバちゃーん!ようこそぉ。座ってねぇ!』

モトコちゃんが明るく迎えてくれた。

教室の中央に机を2つ、向かい合わせにくっつけて置いてある。

先生との面談みたいだなって思った。

用意されていたイスに座った。

気になっていたことを尋ねた。

『えーと、どうしてこの部屋なの?』

『教室だとねぇ、周りが気になって話しにくいからだよぉ!ここなら大丈夫だよぉ。』

『勝手に使っていいの?』

『今日はねぇ、英会話クラブはお休みだから大丈夫だよぉ。私、部活無い日はよくここにいるんだぁ。』

モトコちゃんの説明を聞いたあたしは、辺りを見渡した。

あたし達がいつも授業を受けているクラスの教室と大きく違うのは、机とイスが壁際に散乱している点だ。

その代わり、部屋の3分の2くらいは何も無いスペースが生まれている。

この空いたスペースで、部活動をしているのかな?

今日は、このスペースにあたし達の面談用の机が置かれているけど。

あたしは答えた。

『そうなんだ。じゃあ大丈夫だね。』

『…ミツバちゃん。』

珍しく、モトコちゃんが真面目な表情をして、あたしを呼んだ。

普段はもっと緩んだ顔だ。

確認できないけど、あたしも緊張しているから、顔がかなり強張っていると思う。

『…うん。』

『私ねぇ。ミツバちゃんが大好きなんだぁ。だからねぇ、最近のミツバちゃんが心配。』

『…。』

『できることならねぇ。何かしてあげたい。だけどねぇ。相談されたわけじゃないから…。何もできないんだぁ…。』

『ありがと、モトコちゃん…。ごめんね。心配かけちゃって…。』

『私が勝手に心配してるだけだよぉ!』

こんなにも最低なあたしのことを、心配してくれている友達がいる。

1人で考えても答えは出ない。

それなら、モトコちゃんに相談しよう。

今よりも…。

あたし1人よりも、状況は良くなると思う。

『あたしの話、聞いてくれる…?多分、モトコちゃんはさ。なんとなく内容を察しているとは思うけど…。』

『そうだねぇ、なんとなくはねぇ。でもねぇ。どんな内容でも、ミツバちゃんを嫌いにはならないから、安心して話してねぇ!』

『うん。ありがとう…!』