6限目の授業が終了して、放課後になった。

ヨウは、あたしが在籍するクラスの教室へやって来た。

『帰るぞ。』

あたしの席の前に立って、言った。

『…大丈夫だよ。1人で帰れるから。』

それに対して、あたしは冷たく答えた。

『そうか。なら俺は、ミツバの後ろを着いていく。気にしないでくれ。』

ヨウの顔もまともに見れない。

最近のヨウは、ずっとこんな感じのことを言って、あたしと駅まで一緒に歩く。

結局は、歩いている途中にヨウから話しかけられる。

だから、一緒に帰っているのと変わらない。

なんでもない話を、くだらない話を。

ヨウはずっと、あたしに話してくれる。

『うん。それなら…。あたし…。帰るね。』

『分かった。』

ヨウは静かに答えた。

その声を聞いて、通学用のリュックを背負い、立ち上がった。

『ミツバちゃん…。』

モトコちゃんが、何か言いたそうな目であたしを見ている。

それでも、優しいモトコちゃんは何も言わない。

あたしは教室を出て、下駄箱に向かって歩き出した。

『今日はな。体育の時間にハンドボールをしたんだけど…。』

後ろから、ヨウの落ち着いた低い声が聞こえる。

あたしは結局、ヨウを突き放せていない。

一応、別れは告げている。

家に泊まった後だけじゃない。

その2日後にも別れようって…。

でも、ヨウは一言だけ。

『まだ本気じゃないな?それなら問題ない。今後、俺がやることは気にしないでくれ。』

それからは今日みたいな感じ。

変わらない優しさをあたしに向けてくれる。

ヨウ、どうして…?