夏休みが始まって3日ほど過ぎたある日のこと。

あたしは、正午過ぎくらいに彼の家に着いた。

ツクシくんとは家の中よりも外で遊ぶことの方が多かった。

だから、久々に彼の部屋に行くと思うと、少し緊張した。

『どーも、ミツバちゃん。暑かったよね?』

『うん…。溶けるかと思った。あつすぎ…。お邪魔しまーす。』

いつも通りにドアを開けて靴を脱ぎ、家の中に入った。

その時、家には誰もいなかった。

ヨウもお母さんもいなかった。

『今日は…。誰もいないんだね。』

『みんな出かけてるよ。兄さんは夏期講習。父さんは仕事。母さんも仕事じゃないかな?』

あたし達は階段を登り、ツクシくんの部屋に入った。

ヨウの部屋と似たような匂いがした。

クーラーの風が心地良い。

お互い、床に敷いてある座布団の上に座った。

その後はたわいもない雑談が続いた。

内容に中身なんてなくて。

しかし、なぜか違和感があった。

直感、危険信号。

やがて会話が止まった。

室内でもセミの鳴き声がうるさい。

『…。』

『…。』

なんだろう?

この違和感は。

あたし達の視線がからみ合った。