お父さんが冬の夜明けと共に去り、冬咲市で起きていた変死事件もぱたりと止まって、季節は春になった。


「緋莉、今日はお父さんの誕生日だけど、忘れてないわよね?」

「わかってるよー。優陽も夜は来てくれるって」

「よかった。夕食作って待ってるわ。優陽くんによろしくね」

「うん、楽しみにしてるね! 行ってきます!」


 わたしは声をあげて家を出る。お父さんが好きだったバラに彩られた庭を駆け抜けて門を開けると、そこにはわたしの大好きな人が待っている。


「おはよう、緋莉」


 あれ以来、優陽はわたしを迎えに来てくれるようになった。まだわたしの体が心配なのだという。


「おはよう、優陽。お迎えありがとう」


 そのまま二人で緑地公園に入り、バラ園に向かう道を進んでいく。怖いことや不思議なことが沢山起きた場所だけれど、今ではお父さんが眠る大切な場所だ。