「私立七海学園高等学校」それは世界一の結婚をしてもらうためにあり、この学校の校長でもある七海夫婦の会社、セブンオーシャンが開発した、マッチングシステム・デステニーの実験も兼ねているという・・・
 「まぁ、随分と大きなところね!」ここには自身の父親を社長に持つ、少々気の強い少女がいた。その名も橘和葉といった。さっそく寮に行ってみると、そこにはエプロンをつけて部屋中をくまなく掃除する男がいた。そして和葉にきづき、「あぁ君が僕のパートナーか、よろしくな。」とすっきりした顔で言い、慌てて「僕は泉一真だ。申し遅れてすまなかった。」と付け加えた。その聞きなれた声を耳にした和葉はもしかして・・・という顔で聞いてみた。
「あなた、私を覚えている?橘和葉よ?」
「え・・・」
「私は覚えているわ。だって、あなたと私は幼馴染だもの。」
「あ、あの和葉ちゃん!?」
驚いた顔をみせた一真は急に照れた顔になり、何かを言いたそうな表情になった。それを見た私は、何故だか面白くなってしまい、少し昔の言い方をしてみた。
「そんなに照れなくてもいいのよ、一真くん♡」
そんな顔を見た一真は、急に真面目な顔になり、
「和葉…」と呼び掛けてきた。
「なぁに」と問いかけると、急に
「僕たち、真剣に付き合わないか?」と言ってきた。
急なことだったので和葉は取り乱し、逃げてしまった。
(何なの急に!?一真は私を好きなの!?それとも一攫千金を狙っているの!?)
と思いながら無心で走り続けた…
 そんな中、入学式が始まった。さっきのことを忘れるため校長の話をしっかりと聞いていると、一つのことが分かった。それは一日中パートナーと共に過ごすということ。先ほどのことを思い出すと、相当気まずいだろうとすぐ分かり、青ざめた顔になった。すると、隣にいる一真がこっそり話しかけてきた。
「さっきのことだけど、今日の夜八時に答えを聞かせてくれないか?勿論、嫌なら断ってくれ。」と言ってきたのだ。小さい時から薄々気づいていたが、一真は少々期待をしすぎるところがある。それを知っている和葉は「あまり期待をしすぎないことね。」と、釘を刺しておいた。
 そして約束の夜八時・・・
「どうしよう…全然答えを考えていなかったわ!!」
(本当のパートナーになってラブラブになれば金の夫婦の卵になれるかもしれない。でもそういうことは彼と仲良くなれるかどうかが大事になってくる。ということは…)
「答えは考えてくれましたか?」
「え、えぇ」
「私はあなたとは付き合える。でもその前に貴方のことをもっとよく知りたいの。」
もっと先のことを考えての答えだった。
「分かりました。ではおやすみなさい。」
 そして翌日。一真は少し照れた顔で問いかけてきた。
「今日から、手をつないで登校しませんか?」
「えっっ!!」そう驚くと、
「僕のことが知りたいのでしょう?」と言われ、言い返せなかった。
教室について授業を受けていると、体育館でのイベントが始まった。内容は…
「ペアどうしで風船を抱き合って割るその風船をどれだけ多く割れるか。」というので和葉はかなり引いた。更に、『お互いを知るきっかけにする』…というのだ。そんな様子の和葉を見かねて、一真
「やめとくか?」と聞いてきたので、少しだけ強がって、
「大丈夫よ。こんなもの、簡単にできるわよ。」と言っておいた。だがいざやってみると、凄く近いのだ。
「か、かなり近いのね!?」
「まぁ、これがペアゲームですからね。」そんな一真の冷静な言葉に和葉は恥ずかしくなった。そして何とか風船を割ると、中から小さな紙が出てきた。その紙を見てみると、『好きな異性のタイプは?』という質問が書いてあった。その質問を目にした和葉は回答に困った。小さな時から一真は好きだったが、その『好き』が恋愛の好きなのか、友達としての『好き』なのかはわからない。一方で一真も困っていた。一真は出会った時から少し和葉のことが気になっているからだ。ここで和葉の名前を出せばカップル成立の可能性の確率は高くなるが、一真は凄く恥ずかしいのだ。とのことで二人は凄く困っていた。だが、和葉と一真は勇気を振り絞った。
「「あのっ!!」」二人の言葉が交わった。
そこで和葉は、「一真が先に言って良いわ」と遠慮した。
「僕のタ…タイプは…社長令嬢で少々気が強くてお嬢様系のかわいらしいツンデレみたいな感じの子です!!」
「私のタッ…タイプは…超真面目ボーイでとてもきれい好きで少しだけ頑固な感じの人よ!!」
両者照れながらの遠回しな告白に、二人が気付き始める。
「「そ…それって…」」
「貴方のことよ!!」  「貴方のことです!!」
「「え…」」二人の息がぴったり重なった。両者その遠回しな告白にびっくりしたのか、二人の中の時間が止まる。そして和葉は「貴方がいいなら私は喜んでお付き合いさせてもらうわ」と答えた。一真は「僕も、君がいいなら喜んで」和葉も一真もその告白を嬉しく受け取ったように思えるが、内心はそうじゃなかった。(私は、恋は答えのない道のりを歩むものだとは思っている。けれどこれで彼を傷つけたくはないわね…)
(僕は和葉のことを出会った頃から好きだけれど、これで和葉を傷つけたくはない…)二人の心はなんだかんだお互いのことを考えているのだ。そのことは近隣の寮のペアたちにはすぐに伝わった。
 『えぇっっ!!和葉さんって、一真さんと付き合うことになったの!?』隣の寮の白雪鈴音と八上晴は大声を出して驚いた。白雪鈴音は小学生の時の同級生で、それなりに仲良くしている。信頼しているからこそ、鈴音に一番に伝えたということだ。
「ちょ、ちょっと、声が大きいわよ!!!」と大きな声に慣れていない和葉が慌てる。「大丈夫ですよ、これくらい。」と鈴音のパートナーの八上晴が優しい顔で言ってくる。そういうやり取りで和葉がいらだっていると後ろから一真が「やっと見つけた、探したんだぞ。」と飛びついてきた。その様子を白雪・八上ペア以外の生徒たちも目撃したため、一部の生徒たちから「付き合っているんじゃないか」と噂されている。それが間違っていないからこそ、二人とも何も言えないのだ。そしてその場を『手をつないで』立ち去ったため、噂はさらに悪化した。
 その夜…和葉は凄く照れた顔で一真に話しかけた。
「ね、ねぇ、私達もたまにはカップルっぽいことをしてみない?」と聞いてきた。驚きすぎて、一真は一瞬固まったが、すぐに元の顔に戻し、「カップルっぽいことって…」と言いながら、和葉を「こういう感じですか?」と床に押し倒した。良い感じの雰囲気と思えたが、その直後に『ビーッ!ビーッ!』という警報音が部屋中に鳴り響いた。警報音はあまりにも大きすぎ、近隣の寮の人たちがどんどん出てきた。その後私たちは学園長のお説教を受け、眠りについた。
次の日に学校についてHRが始まると、学園長から直々に新しい行事のお知らせに来た。「なにかしら」と和葉がつぶやくと「さあな」と男らしい返事が返ってきて、少しびっくりした。
『私たちは考えた!君たちが真実の愛に近づくためには何が必要か! そして気づいた!それは互いにときめくシチュエーション!?』
あまりのテンションの高さに一真の顔色が悪くなった。
「大丈夫?」
「大丈夫ですよ。平気です」その強気さに和葉は少し笑った。
『ということで来週、デート遠足を行いまーす♡』
というのだ。ただでさえ恋愛経験のない二人は、相当ピンチな状況にあった。
(で、でーとって遊園地行ったりするやつよね!?そんなのは夢の世界のことだと思っていたわ!?)
(で、でーとって手をつないで歩いたりするやつだよな!?) 初体験が丸見えな二人は世間でいう初心なのだ!
 そんな心境で『デート遠足』が始まった。
まず驚いたのは、『手をつなぐ』ということ。恋愛未経験の二人だと、かなり恥ずかしかった。それでも
一真は「つなごう」と自分から言ってくれたので和葉は嬉しかった。その後いろいろなアトラクションを回っていると、
「ちょ、ちょっとトイレに行きたくなったのでここで待っていてくれ」とかわいらしい顔で言うので「分かったわ」と和葉もすんなりOKした。そして待っていてと言われた場所で待っていると、突然男三人組がこっちに走ってきた。
「ねぇ、君もしかして一人?パートナーとかっていないの?」
「え、な、なによ」
「良かったら俺らとこの後一緒にどっか行こうよ~」
とへんな絡み方をされた和葉が初めてなのでよくわからなくなり、
「悪いけど今、彼氏を待っているからあなたたちの相手はできないの。」
と素っ気ない態度をとり、突き放そうとしたが男たちは懲りずに続けてきた。
「え~、そんなこと言わずに!ねっ!彼氏なんかどうでもいいじゃんか~」としつこく続けてきた。その時だった。
「その言葉はいただけないな。君達!」
「一真!?」
急にやってきた彼氏(パートナー)に和葉と男三人がびっくりする。
「ど、どうしたのよ。一真はトイレに行ってたはずじゃ・・・」とびっくりした和葉が問いかけると、「トイレが凄くすいていたからすごく早く戻れたんだけど、戻ってきたら和葉が男三人に取り囲まれているのが見えたから」などと男らしいセリフを軽々と口にする。そんな様子の一真を見て、男達は去っていった。
「早くほかのところへ行こう」と一真が恥ずかしそうに言ったので、和葉はくすくすと笑った。
 そして翌日からは、いつもと同じ生活になった。そして中間試験が始まった。和葉は三十三位、一真は三十二位だった。二人ともそんなに成績は悪くはないが、これで総合順位に響きたくないという思いで、必死に挑んでいるのだ。
「あなたも頑張って勉強していたのね。」
「あぁ、君も珍しく目の下にクマを作って勉強していたね。」互いの頑張りを労っていた。一位に届くのはほど遠いかもしれないが、そのための努力をしているのだった。
「まぁ次は体育祭だからな!」
「次のイベントに向けて頑張らなくちゃね!」と体育祭へと意気込んでいた。
 そして体育祭当日、和葉は少し体調が悪かった。だが一真に迷惑をあまりかけたくなかったため、だれにもそのことを話していなかった。
(体育祭に体調を崩したって一真に言ったらせっかくの高校初めての体育祭が台無しになってしまうわ。これくらい、たぶん大丈夫よ!) と軽い気持ちで体育祭に挑んでいた。というのもこの体育祭でMVCを取れば、結構な確率で目立てるからだ。最初の競技はクラスリレーだった。体調があまりよくない和葉にとっては好都合ではないが、頑張ってみることにした。だがいざやってみると、かなりきつかった。(走ろうとすると激しくおなかが痛くなってくるのよね…しかもさっきから頭もくらくらしてきているし…)と考えながらゴールをすると、心配していた一真が話しかけてきた。
「大丈夫か?和葉、さっきからすごく顔色が悪いぞ?体調が悪いんじゃないのか?」
「え?だ、大丈夫よ、大丈…」そう言いかけたときに、和葉は倒れた。一緒にいると安心するパートナーの一真が心配してくれてとても安心したから倒れたのかはわからないが、和葉は救急車で運ばれたので、一真は病院へ駆け付けた。
「和葉!!大丈夫なのか!?」一真が病室につくと、和葉が驚いた顔になった。
「一真!?大丈夫だけど体育祭はどうしたのよ!!」
と慌てて聞くと、
「体育祭より和葉の方が大事だ」と言ってくれて、和葉はかなりキュンとした。その二人の間に、ある男が現れた…
 「やぁ和葉、調子はどうだい?」と三十代後半くらいの男が現れた。「どこかで見たことがある…」と一真がつぶやいていると、謎の男が、
「久しぶりだね和葉、それと一真君。」このセリフで一気に分かった。一真がそう思った瞬間だった。和葉が、
「お父様!?」とびっくりした顔で叫んだ。最初にも説明したが、和葉と一真は幼馴染。それに加えて家族ぐるみの付き合いもあるため、和葉の両親も、一真の両親も、たがいの子供の事は、よく知っているのだ。和葉が
「お母様はどうされたのですか?」と寂しそうに聞くと、和葉のお父さんは、
「今日ママはお仕事で来られなかったんだよ。せめて私だけでもと思ってね。」と、ため息をつきながら話した。一真と和葉のお父さんは小さな時から仲が良かったので、和葉は少し安心した。
 翌日一真と寮に戻ると、白雪鈴音が一目散に駆けつけてきた。
「うわーん!和葉さーん!!昨日急にいなくなっちゃったから心配したよ~!!」とすごい勢いで抱き着いてきて、和葉はとても嬉しかった。後から八上もやってきて、「大丈夫でしたか?」と言ってくれたのも、少し驚いた。
「えぇ、ただの疲労だったみたいだから大丈夫よ。」
そう笑顔で二人を落ち着かせると、自分の寮に戻りさっそく片づけを始めた。その間に一真がせっせと寮の掃除をしていたので、和葉は少し微笑ましかった。そんな時、一真が不思議そうに話しかけてきた。
「なぁ、和葉の両親って、いっつも一緒だったのに、どうして今日は一緒じゃなかったんだろうな?」と不思議なことで考え始めたので、和葉が答えた。
「私がまだこの学校に来る直前、お父様とお母様がけんかをしてしまったの。それ以来たぶんずっとあんな感じよ。」そう寂しく和葉がしゃべると、一真が
「大丈夫だ、和葉には俺がいる。」と甘々なことばを発した。そんな言葉を聞いて、和葉は思った。
(やっぱり風船の時みたいな微妙な告白じゃ、示しがつかないかしら?だったらやっぱり告白した方がいいのかしら…)と自らが告白しようと考えるようになっていた。その時一真は、
(やっぱり風船の時みたいな感じじゃ気持ちが伝わらないよな…ここはやっぱり男らしく俺から告白するべきなのかな?) こちらも自らが告白しようとしていた。
 そして翌日…
(どうしましょう!?いつ告白するべきか考えすぎて、全然眠れなかったわ!!) と、完全に和葉が告白するということになっていた!一方一真は…
(まぁ考えすぎてもあれだからな!!タイミング見計らって告白しちゃうか~!!) とウキウキ気分で告白に臨んでいた!!そんな気分で、二人で手をつないで登校していると、白雪・八上ペアの白雪鈴音が、不思議そうな顔で聞いてきた。
「あれ~今日は二人の気分がバラバラですね~どうしたんですか~?なんか和葉さんはげっそりしているし、一真君はウキウキしている感じですけど?」その言葉を聞いて一真はもちろん、和葉はびっくりした。
(パートナーでも、恋人ですらない鈴音さんが、一真『くん』ですって?第一あなたには八上さんというれっきとしたパートナーがいるじゃない!!) と、猛烈に嫉妬していた。だがその感情を表に出すと、友情関係が崩れる可能性があるため、和葉はそれを控えた。だがその代わりに、
「行きましょう、一真。あなたに話があるの。」と一真を連れ出そうとした。だが一真は、
「いいじゃないか、ここで。」と面倒くさそうに話した。そんなセリフを聞いて和葉はあることを思いついた。とりあえず「分かったわ」と言って、わざと白雪・八上ペアのいるところで話した。
「私はあなたが好きよ。風船の時みたいな曖昧な事ではなく、異性として、泉一馬を好きなのよ!!私と付き合って!!」と勇気を振り絞り前とは違う告白をした。そんな告白を聞いて一真は、
「俺も同じことを言おうと思っていたところさ。」と和葉に笑いかけ、
「俺も同じだよ、和葉。俺も橘和葉が好きだ。俺と結婚を前提に付き合ってくれ。たとえ金の夫婦の卵になれなかったとしても、結婚できる年になったら俺と結婚してくれ!!」とこちらも勇気を振り絞って告白(プロポーズ)をした。そして二人とも同じタイミングで、『はい』と返事をし、白雪・八上ペアからの祝福を受け、二人の新たな生活が始まる…