見慣れた街もモンキチョウの上から見ると、全く別世界。

横を飛ぶすずめにどきどきしたり、犬にほえられてびくっとしたり、風の流れを心地よく感じたり、全てが新鮮に思えた。

公園にはすぐ着いた。

才蔵は虫達と野球をしていた。

3人はモンキチョウから、降りてそれを見守る。

才蔵がさつまいものバットを持って、バッターボックスに立つ。

ピッチャーのカマキリは鎌首で種のボールをつかみ、振りかぶった。

ぴゅん。

かこーん。

ボールはすごい勢いで場外へ飛んでいく。

ひろ「やったーホームラン」

月花「まだよ」

月花は手早くバックから鏡を取り出し、鏡を覗き込む。

鏡には才蔵の打った球が映し出されていた。

ひろも鏡を見るとボールは山の向こうへと飛んで行こうとする。

途端、下にあった山道が白龍になり、大きく口を開けた。

そしてボールを口でくわえようとする。

ひろ「危ない!」

しかし、ボールは更に加速し、白龍の口は空を切る。

白龍は残念そうに首を振るとまた元の山道に戻った。

月花「才蔵、ホームラン1000本目おめでとう」

才蔵は親指を立てる。

才蔵はひろに近づくとさつまいものバットを突き出し

才蔵「やる」

ひろ「えっ」

才蔵はひろにバットを渡すとまた野球に戻った。

月花「じゃっ、行こうか」

ひろ「うっ、うん」

3人は再び、モンキチョウに乗り先を急ぐ。

※この話は全てフィクションであり、実在の人物や団体などとは一切、関係ありません。