年末年始の巫女はとにかく忙しい





お守りを用意して、お客さんが来たら

授与所でお守りを渡す






次々とお客さんは来るから休んでいる暇は

ない





そして、毎年のようにこの神社の巫女は

私と母だけだ





「叶、ごめんね。私立受験前なのに」





と、申し訳なさそうに母は言った





私は今中学三年だから、この時期は私立受験

前だ





「いいの。巫女の仕事、良い気分転換になる

し。それに……」





「それに??」





「ここからは秘密」





そう言うと母はにんまりして私を見た





「あら~~。恋の話かしら?」





「ち、違うもん」





「そうは見えないけど」





「違うんだってば…!」





「ふふ、はいはい。あ、そろそろお客さんが

お見えよ」





母さんは鋭いなぁ……







私が片思いしていることはバレバレなのかぁ






そう思いながら私は巫女の仕事を始めた





今年は会えるかな…





今年は私立の受験で会えなくてもおかしくな

いよな……





そんなことを考えて一人授与所に立っている







「あの~これお願いしても良いですか」

と声をかけられた





まずい…!

全然気づかなかった





「申し訳ありません!」





そう言って頭をあげたところにいたのは…







あ…







「あ、いつもの巫女さんだね」








今考えていた人がいた








「すみません、気づかなくて」





「良いんですよ。俺がいつもの巫女さんにお

願いしようとしていただけだから」





そんな些細な会話だけでもドキドキしてしま







だ、ダメだよ!





これは恋愛的な考えじゃなくて“いつも偶

然”私がいあわせているだけなんだから!!





「お守り、袋にいれますね」





「よろしく」





彼が買っていたのは合格守りだった





あれ?





いつも交通安全じゃなかったっけ?





もしかして…





「今年受験ですか?」





「そう。よく分かったね」





いえいえ。毎年見てるので…





「俺今年高校受験なんだよね」





え……




「ウソ…私もです」





「ほんとに…!一緒に頑張ろう!!」





う…笑顔がまぶしい





「あ、そろそろ電車来るかな。また来年、よ

いお年を!!」





「あ…受験頑張ろうね!」





彼はすぐに姿が見えなくなってしまった





声聞こえたかな?聞こえなかったかもしれな







でも………無事に会えた





「今年も良い年になりそう」





そう小声で言って幸せをかみしめる







「やっぱりあの男の子が気になるのね」





「か、母さん!」





いつの間に!





さっきまで休憩に入っていた母さんは今来た




ばかりのようだ





「あの男の子も叶のとこによく来てるしね。

向こうも叶のこと気に入ってるんじゃな

い?」





そうなのかな??





「信也さんか来るときに私がいるだけだよ」





「ちゃっかり名前知ってるんだからやっぱり

気になるのかな?」





「違うって…!」





「はいはい。休憩入ってきなさい。ここから

は母さんがやってるから」





「はぁい」





そう言ってため息をつきながら休憩に入った





母さんには完全に片思いだってバレてるみた

い……










でも彼に気づかれちゃいけない








私は彼に優しくしてもらっただけの巫女なんだから