初は立ち上がり、部屋の奥のブラインドを上げる。
「ほら! お月様! こうしたら、もっとキャンプって感じがしませんか?」
窓の外では、煌々と満月が輝いていた。
その柔らかな光が、ふたりの部屋に降り注ぐ。
紺も窓際に向かい、初と並んで月を眺める。
「本当だ。バンガローから見てるみたいだ」
「月って、こんなに明るいんですね、すごい」
「真っ暗になるとよくわかるね」
しばらく静かに眺めていたら、横から「くちゅん」と可愛い音が聞こえてきた。そちらに顔を向けると、初が鼻をすする。
「寒い?」
「少し。あ、停電ってことは、エアコンも切れたんですね。どおりで冷えてきたなと……」
初は腕をクロスし、身を震わせる。紺はクローゼットを開け、毛布を取り出した。
「ちょうどここにあって良かった」
紺は毛布を羽織ると右腕だけ広げ、そのまま初の肩にそれをかぶせた。
「わっ!」
「これでもっと、キャンプって感じしてきたね」
「はい、あったかいです。でも、緊張しますね」
月明かりに照らされた初の顔が、赤く染まる。
もう何度もハグもキスもしてると言うのに。まだこうやって恥じらう彼女に、愛しさがこみ上げる。
「そ、そうだ! クッション、持ってきましょう。ここに座って月を眺めたら、もっとキャンプって感じが……、きゃっ!」

