「この道であってるよね…」

私は一人つぶやきながら右手には水色のスーツケース、左手には中嶋先生から事前にもらっていた家までの地図を握りしめ、舗装された道を歩いていた。

かれこれ40分くらいは歩いているだろうか。

夏が近づいてきている7月は、今日もとても晴れていてずっと歩いていると少し汗ばんでくる。

時折ハンカチで額の汗を拭きながら、私は生まれて初めて自分の育った実家へ向かっていた。

結局、2日前に先生からきょうだいと暮すことになると聞かされて、最初は戸惑ったけれどそんなに悪くないかもと思い直してその言葉に乗った。

きょうだいってどんな子なんだろうなぁ…妹かな、それとも弟だったりして…。

まだ見ぬ家族を想像すると、少しだけ心が弾んだ。

「年下だったら可愛いなぁ〜」

長年1人っ子だった私だけれど、密かに年下の子が欲しいとずっと思っていたのだ。

1度でいいから『はるかお姉ちゃん」って呼ばれてみたいっ…！



色々な妄想を頭の中で広げていると、ついに目的地に到着した。

…のだが、一瞬自分が見ている建物が信じられなくて思わず目をぱちぱちとしてしまう。

だって…だって…だって……！

「お屋敷やないかい！」