最愛の婚約者が記憶喪失になった話

゚・*:.。❁




「……全然ダメそうだねー」

「すみません……」


リバイバルデートを終えた俺と初は、夕焼けが差し込む電車でぼーっと揺られていた。


「でも、とっても楽しかったですね!」


遊園地の半券を両手で持ってそう笑う初は、かわいい。


「それならよかった」


はやく思い出して欲しいけど、体も心配だしあんまり無理はさせたくない。

……大丈夫。まだできることはたくさんある。

気持ちばかり焦りそうになるのを、もう一度小さく深呼吸して落ち着かせた。

次は何をしようかと考えを巡らせていると、初の視線が左頬に刺さった。


「ん?」

まだ少し恥ずかしそうにする初と目を合わせる。

「あ……あの、き、聞いてもいいですか」

「なんなりと」

「あの……私は鮫上くんのこと、どう思ってたんでしょうか」

「ん?」

思ってもない質問。

「婚約者…ってことは、その、す、すす好き、だったんですよね…?」

「…そうね」

「私は鮫上くんのどんなところが好きだったんでしょうか…?」


初がつぶらな瞳で俺を見つめるので、ちょっと尻込みする。


「それ俺に聞く?」

初がハッとした。

「ご、ごめんなさい…!でもそこがわかれば気持ちを思い出せるかなって…」

「んー……」

初から見た、俺…?


「……クズ?」

「へ」