最愛の婚約者が記憶喪失になった話

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「わぁ、かわいい」


叔母の家で3日間安静にしていた初は、特に頭痛を起こすこともなく、かと言って記憶が戻るわけもなく。

今日から学校に復帰することになった。

その日の授業をすべて終えたその放課後、俺に渡されたハートの風船を抱えた初はわかりやすくワクワクしてる。


「これ、もしかして思い出のものなんですか!?」

「うん。これでゲームしたの」

「ゲーム?」

俺は自分のお腹に風船を抱えて、直接初には触れずに抱き合うフリをしてみせる。

「こうやってお互いのお腹の間に挟んで抱きしめあって割るゲーム」

「!?」

初が顔を真っ赤にして冷や汗をかきながら後ずさった。

「ああああああののののの」

「……ブフッ」

既視感のある光景に思わず吹き出す。

「え!?なんで笑うんですか!?」

「ごめんごめん」

懐かしい。この反応。あの時の反応そのまんま。
……俺のこと知らないくせに、めっちゃ初なんだよなー。

「…うん、じゃーいくよー」

俺は頭の上に両手をかざして風船を初に向かってトスする。

「ほい、ぽーん」

「!?」

困惑する初の元にハートの風船が落ちる。