なにこの子、かわいい。


「んーん、もっと上」

「上?」

「婚約者」

「!?」


初が顔を赤くしたまま固まった。

……かっわ。

なんかこういう初を見れるのは新鮮で悪くないかも。



「倉下!」


出入り口の方から走ってきたのは宇貝・星出ペア。

事情を聞いて駆けつけたようだ。


「大丈夫か…!?」


ひどく心配そうな顔の宇貝を見た初がハッとした。


「……宇貝くん…!?」


そしてあからさまに顔をパァー…と明るく輝かせる。


「宇貝くんですよね、中学一年生のとき同じクラスだった…!どうしてここに!?」

初は立ち上がって俺の前を通り、宇貝に駆け寄って目を輝かせる。

…距離近くない?


「え?あ、あー……俺、同じ高校で……」

「そうだったんですね…!」


なるほどね、唯一の顔見知りだもんねー。


嬉々としてはしゃぐ初にタジタジになる宇貝は、少し申し訳なさそうに俺に目配せしつつもどこか嬉しそうに見える。


「不可抗力だよ」

隣に来て俺にだけ聞こえるように言ったのは、宇貝のパートナーの星出。

「許してやって」

「えーなんのことかなー」

無理、全然許せない。

どこほっつき歩いてんだ、初の記憶。早く戻ってこい。