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「えー、いわゆる記憶喪失ってやつですねぇ」


駆け込んだ総合病院の医師が回転椅子をギッと鳴らして振り向きざまに言った。


「記憶、喪失……」


その医師の対面に座る俺は、俄かに信じがたいその言葉を自分の中に染み込ませるように繰り返した。


「頭に小さなたんこぶがありました。寝てる間にどこかにぶつけて脳震盪を起こした可能性もありますし、それと関係なく心的ストレスからくる記憶障害も考えられます。とにかくしばらくは安静にして様子を見てください」

「……わかりました」


俺と横に並んで先生の話を聞く初は、まだこの受診結果を受け止めきれていない様子。


「……どうしたら治ります?」

「うーん、なんとも言えませんが…落ち着いたら少し思い出の場所なんかを巡ってみるのもいいかもしれませんね。ただし無理はしないように」

「…わかりました。ありがとうございました」


放心状態の初とともに診察室を出る。