最愛の婚約者が記憶喪失になった話






「……」




あー、泣くの我慢するのって、疲れるな




「……くん」




……ん?




「紺くん!」


耳元で声がして、ハッと目を開けた。


「朝ですよ!紺くん!」

「…………朝?」


見渡すと、そこはチャペルじゃなく俺の部屋。ベッドの上。

ベッド脇から俺を見る、初。




…………ん?




「……初?」

「はい!」

「何してんの」


ここ、俺の部屋なんだけど。


「?何って、なかなか起きてこない紺くんを起こしにきたんですよ!今日は一緒に美味しいランチ行く約束してましたからね!お休みの日だから起こすなっていうのはなしですよ?」

「……約束、覚えてたの?」

「?当たり前じゃないですか!」


段々と覚醒してきた頭で、俺は初にクイズを出題する。


「…………俺たちのファーストキスの場所は?」

「へ?特別棟のチャペルのことですか?トレード拒否するためにしたやつですよね!」


…やばい。

胸が苦しい。


俺は枕にボスッと顔をうずめた。



てか、



「はぁーーー……」



夢オチかーーーい



「?どうしたんですか、紺くん」

様子のおかしい俺を初が覗き込んで心配そうにするので、それを横目で見てまた込み上げる。


あー、やばい。


俺は体を起こして、初を抱きしめた。