「ッキャー!!」


それは、いつものように目覚めの悪い朝だった。

そろそろ起きなくてはと枕に名残惜しく顔を埋めているときのこと。

ドアから顔を覗かせた婚約者が、突然悲鳴をあげて尻餅をついた。


「……なに」


朝から騒がしいな、うちの子は。

俺はふぁ、とあくびをしながらベッドから這い出る。


「な、ななななな…!?」


彼女は起き抜けのパジャマ姿で、やっぱり俺の方を怖いものでも見たかのような顔で見てる。


「……ん?虫でもいた?」


振り返って部屋の中を見渡してみるけど、それらしきものはいない。

てかこの時間に彼女がまだパジャマなんて珍しい。


「どうしたの。もしかして怖い夢でも見た?」


近寄って彼女の前にしゃがみ、頭を撫でようと手を伸ばした。


「ひゃあ!?」


彼女は体を縮こませて俺の手に怯える。


「……ん?」


様子がおかしい。

俺は得体の知れない不安に襲われて、婚約者の名前を呼んだ。


「……初?」


は、と初の瞳が揺らいだ。


「あの……どちらさまですか?」





…………ん?