その夜、私は夢を見た。
 夢の中でイチを探している時に出会ったあの優しそうなおじいさんが現れ、私にゆっくりと頭を下げる。

「…あのときは本当に申し訳無かった…貴方が彼を大切に思ってくれる人間なのかを、自分で見極めたかったのです…。彼は貴方を本当に想っている。できることなら、彼を永く想ってやって欲しい…たとえ人間ではないにしても」

「私はあなたがイチを…彼を、愛していることを知っています!だから私も彼を愛します!あなたの分まで…だから…」

 返しながら感極まり泣き出す私を、おじいさんも穏やかに涙を流しながら笑って返してくれた。

「本当にありがとう。彼に、『コウイチ』によろしく言ってください。ずっと見守っている、幸せにと…」

 おじいさんは私の前からすっと消え、そして私は目が覚めた。

「おじいさん…」

 初めて聞いた、イチの本当の名前。

(…コウイチだったんだ、イチの名前…。おじいさんにとって、イチは“光”だったのかもしれない…)


 起きたばかりの私を、イチが呼びにくる。

「ミオ〜、ご飯できたよ!一緒に食べよ!!味付けをして〜!!」

 キッチンに行くと、なかなか上手く焼けた鮭が二切れ皿に並んでいる。
 サラダ用のキャベツも二つに分けられ、用意された茶碗やお椀、箸も家に仕舞ってあったものを出してきたらしく二人分…

「…二人分??」

 私の問いかけにイチはニッコリと笑顔。

「うん、僕はお腹空いたよミオ〜。早く食べたいよ〜」

「イチ、やっぱりあなた…」

 夜は眠ってしまい朝にはお腹が空いたというイチは、もうきっと、私と変わらなくて…

「ミオ早く〜!」