「イチ…どこ…!?」

 私がまだ早朝の町中を探し歩いていると、優しそうなおじいさんがいきなり私に話かけてきた。

「誰かを探しているのかな?」

「え、え〜と…わ、私と同い歳くらいに見える、男の子を探しているんです…!」

 私は迷ったけれど、人を探していることを正直に伝える。すると、おじいさんは優し気な表情のまま言った。

「…もうあの子は戻らないだろうねえ…」

「どうしてですか!?」

 この人がイチを知っていると確信したと同時に、『戻らないだろう』と言われたのが気になり、思わず強い口調になってしまった。
 けれどおじいさんは表情を変えないまま。

「愛されていない、彼が相手を愛さないところに長居は無用だよ?」

「どう…して…」

(…私は…イチにどうしたっけ…?イチに冷たくした…人形だし、なんて…)

「あの子の代わりに、君には別の『人形』を差し上げよう。恋人代わりになってくれる素敵な『人形』をね」

 私は続けて言われたおじいさんの言葉に愕然とする。

 イチ以外なんて、考えられない。
 ましてあんなに楽しかったイチといきなり別れるなんて…