そんなある日の学校でのこと。

「光崎」

 私を呼んだのは私の好きな人。

「最近さっさと帰るよな。バイトの時間はまだだろ?」

「バイトの時間、早めたの…最近は早く帰る用事が出来たから…」

 私は彼を気にしながらそう返す。

「今日はバイトないだろ?アイツら誘って遊びに行かない?おごるよ」

「ごめん…今週からこの曜日も潰れるの。別の用事が出来ちゃって…」

 これはもちろんイチのため。
 人形なのだから一人(?)で置いていてもいいけれど、遅く帰ってくると泣きそうな顔で抱きついてくるから。

「つまんねえの。いいじゃん、たまには…」

 彼はそう言って行ってしまった。


(私だって、イチの相手ばっかりは嫌だよ…。なんで私は自由にできないの…?せっかく誘ってくれたのに…)

 そんな気分で帰ってきた私は少しイラついていた。
 イチはそんなことも気にすることなく、今日も私にじゃれついてくる。

「ねえねえミオ、次は何をするの??」
「僕もやりたいよ!」
「ミオ寒くない?温めてあげるよ!」

 まるでじゃれつく子犬。

「ああ、うっとうしい!!イチ、おとなしくしなさい!人形らしくできないの!?」

 私は思わずそう言ってしまった。

「…っ、寂しかったんだ…ごめんなさい…」

 あっ、と思ったときにはもう遅かった。
 イチは自分の席になった座椅子に寂しそうに移動し、そのまま動かなくなってしまった。