(まぁでも、今日は結構楽しかったかも…)

 身体を洗いながらそんなふうに今日一日を思っていると、いきなり浴室の戸が開いた。

「ミオ〜、背中洗いにきたよ〜」

 何も着けない後ろ姿の私は思わず顔だけ振り返る。イチはバスタオルを広げ持ったまま笑顔。
 私は驚きすぎて、隠すのも叫ぶのも忘れて絶句した。

「寒くない?ミオ…
「っ…ばかァァァァ!!」

 イチののんびりした声を聞き、私はやっとそう叫ぶ。

「出てって、出てってえ!!」

 そして急いでイチの持っていたバスタオルを奪い取った。

「え…?え??」

 全く分かっていない様子のイチ。

「見ないで〜〜!!」

 私はバスタオルを体に巻き付けイチを追い出そうとしたが、ピクリとも動かない。イチは訳がわからないというように首を傾げて立っている。

 イチは箱に入っていたときより、今はなぜかとても重い気がする…

 私はなんとかイチを後ろ向かせ、肩を押さえて見られないようにした。

「あなたはっ、人形とはいえっ…お風呂っ…いきなり…しかも女性の…」

 もう混乱し過ぎて、全く言葉にならない。

「問題ないよ?」

 イチは無邪気に笑っているようだ。

「ダメ〜!ダメなの、ダメ!!私は見られたくないの〜!!…きゃっっ!!」

 私は足を滑らせて倒れそうになった。

「ミオ…!」