私は銀行や、日用品や何日分かの食材の買い出しを、事細かに質問攻めにしてくるイチを連れたまま済ませた。

「…イチ、あなた何も知らないのね。あなたの言うご主人様は、そういうことをしなかったの?」

「しないよ?お手伝いさんたちがしてくれてるからね」

(…本当に『ご主人様』だったのかも…。じゃあさっきの話し方も、きっとそのお手伝いさんたちのマネだわ…。そんなところにいたイチが、なんでうちに来たんだか…)


 全て済むと、特に何かを食べられるわけでもないイチと一緒のため、特に寄り道をすることもなく家に戻った。

(一緒に食事ができるなら良かったのに…)

 仕方なくそのまま帰ってきたけれど、私は一日中、ずっと喋っていたことに気付く。
 その途端、どっと疲れが出たらしい。

(…喉、乾いた…。疲れた…イチがしょっちゅう話しかけてくるから…。まさか休みで…)

「ねえミオ、僕何か手伝いたい!」

 早速そう言い懐いてくる元気なイチに、私はグッタリしながら返す。

「…私、もう疲れた…。じゃあ…イチはお風呂洗うの、出来る?」

 私の問いかけにイチは笑ってうなづくと、洗剤とスポンジを私に見せにきて確認し、浴室に向かった。
 私はグッタリとソファに寝転ぶ。

(『ご主人様』のとこの『お手伝いさん』に習ったのかな…。まあ良いや、イチに任せよ…)

 そのままウトウトし始めた頃、イチに肩をそっと叩かれて気が付く。

「あ…イチ…」

 イチは穏やかに笑いながら飲み物を差し出して言った。

「さっき買ってきたお茶を作って冷やしたよ。飲んだらミオ、お風呂が沸いたから入ろ?」

「え…うん、ありがと…」

 まだ半分寝ぼけたまま私は返事をして、渡してくれたお茶を飲んでからバスルームに向かった。