「とはいっても、
 茉蕗(まろん)は俺の姿になっているから、
 茉蕗に見つめられているのに、
 そうじゃないような奇妙な感覚になるけどな」


 難しくなっている、言うことが。
 次の言葉を。


 そんなとき。
 言ってくれた、次の言葉を。
 龍輝くん(私の姿)が。

 少しだけ照れくさそうにして。


「そうだね。
 私も龍輝くんと同じ感覚になったりする。
 龍輝くんと話してるのに姿は私だから
 なんか変な感じがして」


 続けてくれた、言葉を。
 龍輝くんが。

 そのおかげで。
 だいぶ落ち着くことができ。
 できた、話すことが。


「ほんとそうだよな。
 俺の目の前には俺がいて
 茉蕗の目の前には茉蕗がいるようなもんだからな。
 奇妙な感覚になってしまうのは無理もないよな」


 龍輝くんの言う通り。
 無理もない。
 そういう感覚になってしまうのは。

 そう思いながら。
 しばらく龍輝くんと他愛のない話をして。
 龍輝くんは諏藤(すどう)くんのお姉さんの部屋に戻っていった。