「あの子たち、茉蕗(まろん)のファンだよ」


 見ている、彼女たちが私たちの方を。
 そのことを不思議に思っていると。
 帆夏(ほのか)ちゃんがそう言った。


「えっ⁉」


 驚いた、帆夏ちゃんの言葉に。

 それと同時に。
 追い付かない、理解が。


 なぜ私にファンがいるのか。


「昨日の茉蕗の活躍で
 一気に茉蕗の人気が急上昇。
 それで二年生と一年生が中心になって
 茉蕗のファンクラブを発足」


 できない、追いつくことが。
 あまりの出来事に。

 そのため。
 混乱している、頭と心の中が。


 そんな状態のまま聞いている、帆夏ちゃんの言葉を。


「そのファンクラブの名前が『茉蕗様を心から愛する会』だったかな」


 持ってくれている、好意を。

 それは、ものすごく嬉しいしありがたく思う。


 ……だけど。
 名前が少しだけ重たい、ような……。



 それに。
 できた、ファンクラブが。

 ということは。
 目立っている。
 そんなイメージがある。


 私は目立つことが苦手。

 だから。
 そういうことにどう対応すればいいのか。
 戸惑ってしまう。





 って。
 そういうことではない。

 最も肝心なこと。
 それを頭の中に入れておかなければならない。



 昨日の私。
 その私は本当の私ではない。


 そのことを知らずに。
 本当の私ではない私のことを好意に思い。
 ファンクラブをつくりメンバーになっている人たち。

 その人たちのことを思うと。
 なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。