驚いた、なんてものではない。

 だけど。
 やっぱりそうだから。
 声を聞いた限りでは。


『白龍』の総長。
 その正体は――っ。


「待っていたぞ、神賀」


 龍輝くん、だった―――っ⁉


茉蕗(まろん)‼」


 龍輝くんが。
 見た、すぐに。
 私の方を。


「茉蕗の手足を縛っているものを解け」


 龍輝くんは。
 戻す、すぐに。
 私に向けている視線。
 視線(それ)北邑(きたむら)さんの方に。

 睨んでいる、ものすごい勢いで。
 龍輝くんは北邑さんのことを。


「それはできない」


 見ている、北邑さんも。
 厳しい表情(かお)で龍輝くんのことを。





 って、あれっ?

 さっきと話が違うのでは?


 確か。
 言っていた、海翔さんは。
『目的の人が来たら解放してあげるから』と。



 違う。
 海翔さんと北邑さん。
 二人の言っていることが。


 もしかして。
 変わった? 事情が。

 それとも。
 解放してくれる。
 その言葉は海翔さんだけの気持ち。
 そういうことなのだろうか。


「解かなければ勝負はしない」


 驚いている、少しだけ。
 海翔さんと北邑さん。
 二人の言っていること。
 それらの違いに。

 それと同じタイミングで。
 言い返した、龍輝くんが。
 北邑さんの返答に。



 言った、龍輝くんが。
 北邑さんに。

 する、勝負を。
 そのための条件。


 どう答えるのだろう、北邑さんは。
 その条件に。