「あっ、それ少しの間、辛抱してね。
 目的の人が来たら解放してあげるから」


 手足を縛っている紐。
 できないだろうか、それを緩めることは。

 そう思いながら。
 動かしている、手足を捻るように。


 そうしている動作。
 見ている、目の前の男子が。

 それだからだろう。
 そう言った、淡々と。
 その男子が。










 目的の人が来たら?

 それは一体どういうことだろう。





 男子が言った言葉の意味。
 訊こう、それを。



 そう思っても。
 今の私は。
 塞がれている、口も。

 布のようなもの。
 それを後頭部のところで縛られているようで。


 だから。
 できない、訊くことも。
 声を出して。







 というのもあるけれど。

 何がどうなっているのか。
 全くわからない恐怖。


 そんな中。
 口を塞がれていないとしても。
 声を出す。
 難しいだろう、そうすることは。


「今、君が目を覚ましたこと
 報告してくるから待ってて」


 目の前にいる男子。
 彼がそう言って立ち上がり。
 離れていく、私から。



 報告……?

 誰に?


 そう思っている。
 その間にも。
『報告をしに行く』
 そう言った男子は。
 離れた、私の目の前から。

 その男子は。
 少し離れたところにいる男子たちに。
「あの子に、ちょっかい出すなよ」
 そう言いながら。
 男子たちの近くにあるドアを開け。
 その中に入っていった。