…ザザッ!

「次は、催涙弾あるからそれ使って。」

低く、疲れたような声で〈Ruby〉は次の行動を告げてくる。

「…?、あぁ。」

不審には思うものの、今はこのワクワクやゾクゾクに身を委ねてみたい!

俺の頭はすでに目的を見失い、壊れていた。

シュルルッ、カンッ!

手からファメの作ってくれたワイヤーを飛ばし、バルコニーの手すりに巻きつける。

「…はぁっ!」

そして、ワイヤーを巻き取る勢いと同時にジャンプした。

(星空に吸い込まれそうな気分で、重力に抗って飛ぶのはなんとも気持ちがいい。)

シュタッ!

だが、その感覚もつかの間。

音を、気配を殺してバルコニーへと転がり、流れるように片膝をついて着地する。

(この余裕は、ゾクゾクする気持ちを加速させる!)

「…ふぅ。」

心臓を落ち着かせるため、俺は軽く息をつく。

と、耳がぴくっと革靴の音を拾った。

カツン…カツンと小気味よい音を。