翌朝、スマホのアラームで目を覚ました。
「意外とよく眠れたな…」
ひとりごとを呟き上半身を起こすと、徐々に昨日の記憶が鮮明に蘇ってくる。

あぁ、とんでもない相手とペアを組まされてしまった…。
まさか顔が見れないと言われてしまうなんて、とんだハズレくじだ。
でも、ただ落ち込んでいても仕方ない。
中学では友達も作れなかったほどコミュ力の低い私だけど、
なんとか彼とのコミュニケーションを頑張ってみようと思った。

「まずはメイク!」
彼には拒絶されてしまったけど、メイクをすると違う自分になれたようで元気が出る。
最初の頃は何もわからず、素肌にそのままチークを塗ったりしていたっけ。
雑誌や動画を見て研究し、数か月後には街中で「可愛い」とナンパされるほどには上達した。
髪も、じっくり時間をかけてツヤツヤ綺麗なストレートヘアを作り上げる。

メイクと着替えを済ませて室内を見渡してみると、彼の姿は見当たらなかった。
余裕をもってだいぶ早起きしたから、始業までにはまだ時間があるはず。
「もしかして、私の顔を見たくないから……?」
絶望的観測が頭をよぎる。
よほど私と顔を合わせるのが嫌で、もう部屋を出てしまったのだろうか。
落ち込みつつテーブルの上に視線を移すと、何か文字の書かれたメモが置いてあった。

『おはよう。
 目が覚めてしまったので先に出ます。
             杉崎』

あぁ、やっぱり…。
別に、早く起きたなら適当に部屋で過ごしていればいいのに。


ふぅ、と深いため息をつき、まずは腹ごしらえと昨日買っておいたパンを一人食べた。