―――朝―――

「おはよう、梨菜」
「おはよう…」
準備を終えてリビングへ下りると、杉崎君がキッチンに立っていた。
昨日のことがあるから、なんだか私まで杉崎君の顔が見られない。
「パン焼いたけど食べる?」
「え……」
朝ごはんは、いつも各自自分で用意して食べている。
私の分まで用意してくれたのは初めてだ。
テーブルの上を見ると、トーストが乗ったお皿が2枚と、
コーンスープの注がれたカップが2つ並んでいた。
「まぁパン焼いてインスタントのコーンスープ入れただけなんだけど」
そう言いながら杉崎君は頭をかいた。照れているのだろうか。
「一緒に食べよう」
「うん…」

何事もなかったかのように、私たちは楽しく会話した。
うつむいたり、部屋を見渡したり、決して視線の合わない杉崎君と
お喋りすることももうとっくに慣れた。
きっとこの光景を見た人は不思議に思うんだろうけど…。

朝食を終え、私たちはいつものように一緒に教室へ向かった。