杉崎君は、慌てて視線をそらす。
…やっぱりダメなんだ。
抱きしめることはできても、私と目を合わすことはまだ無理なんだ。

急に涙がこみあげてくる。
でも、彼の瞳にこの涙が映ることはないから大丈夫。

「ごめんね。明日はいっぱい話そうね。じゃ、お風呂入ってくる」
「あ、あぁ…。ごゆっくり」
私は踵を返し、杉崎君の視線を背中に感じながらお風呂の方へ歩き出した。


シャワーの音にまぎれ、小さく声をあげて泣いた。
こんなの辛い…。
体の距離は0センチでも、心の距離はずーっとずーっと遠い。
私は杉崎君の心に触れたいのに…。

ねぇ気付いて。
最近、あなたの笑顔を見ると私の顔が少し赤くなること―――――