瞳の中で好きって言って

あんなに山岸さんが顔を近づけても、杉崎君は目をそらさなかった。
私の顔は、何メートル離れてたって見てくれないのに…。

「あ、森岡さーん!聞いてよー!」
私が立っていることに気付いた山岸さんが、声をかけてきた。
「アキラがー」
「おい、もういいって!迷惑だろ」
「ぶぅー」
山岸さんと立花君のペアは、クラス内のペアの中でも特に仲がいい。
彼女が杉崎君にアピールしたわけでも何でもないのはわかっている。
それでも…。
「ねぇ森岡さん、杉崎君は森岡さんの変化にちゃんと気付いてくれる?」
「え……」
変化に気付くどころか、元々の顔すら見てもらえないんですが…。
「もういいだろ由美。帰ろうぜ」
「わかったよー。じゃあね、森岡さん杉崎君!」
二人は、仲良く手をつないで教室を出て行った。

「はぁ…」
最悪の気分だ。
さっきの秋元君の指摘に続いて先ほどの光景…胸が痛い。

「梨菜、どうした?大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫!気にしないで」
私のため息が聞こえたらしい杉崎君が、心配してくれた。
「ゴミ捨て行ってくれてありがとう。こっちは課題全部先生に持ってったから」
「ありがとう!結構ノート重かったでしょ。一人で大変だったよね」
「あー…いや、山岸が手伝ってくれて」
「え…」
思いがけない言葉に、何も言えなくなってしまった。