「まだあんまり好みとかが分からなかったから、とりあえずド定番の
 肉じゃがにしてみたんだけど。変な味しない?」
「全然。おいしいよ」
「…!」
家での特訓で母親や父親には何度も食べてもらっているけれど、
初めて家族以外の人に作って、おいしいと言われるのはとても嬉しかった。
ふと杉崎君が箸を止め、リビングを見渡す。
「…もしかして、部屋片付けてくれた?」
「!」
「昨日俺が散らかしっぱなしにしてた荷物入ってた袋とかまとめてあるし…」
「ご、ごめんなさい。勝手なことして…杉崎君個人のスペースは一切触ってないから!」
「いやいや、こっちこそごめん。料理に片付けまで、ありがとう」
「…っ」
「うん。味噌汁もおいしい。俺の好きな味」

杉崎君の口から発せられる言葉ひとつひとつに、胸が高鳴る。
あぁなんだ、普通に優しい人じゃん。
初対面ではとんでもない男だと思ったけど、全然そんなことない。
何か事情があって私の顔が見られないみたいだけど、何とかやっていけるかもしれない。

「…あ、えっと、今度は杉崎君の好きなもの作るね!何が好き?」
「んーなんだろう、オムライスとか?」
「オムライス!作れる!卵はとろとろ派?ソースは?」
「俺は昔ながらの薄焼きで包んだやつにケチャップかける派」
「うんうん!おいしいよね!じゃあまた今度作るね!」

なんだか不思議な気分だった。