理久side

「はぁ、最悪…」
教室に忘れ物をして取りに向かっていた。
昇降口に着いた時に思い出したから取りに戻ってきた。
提出期限が明日だから早めにやらなければいけない。
「すぅ…すっ…」
教室に近づくと中から規則正しい寝息が聞こえてきた。
誰か寝てんのか?
そう思いながら起こさないようにそっ…と扉を開ける。
「……っ」
開けて俺は目を見開く。
そこに寝ていたのは…俺の同室の七瀬千彩だったから。
俺は静かに七瀬に近づいた。
「すぅすぅ…」
サラサラの綺麗な髪。
白くて華奢でいつもニコニコと笑っている七瀬。
「可愛い…」
ボソッと零れてしまった本音。
きっとお前は知らないんだろう?
俺が七瀬を好き…ってこと。
「七瀬…」
俺はそっと七瀬の頬に手を伸ばした。
その時。
「ん…っ、湊…く、ん」
その名前を聞いた瞬間、七瀬の頬に手を伸ばしていた俺の手はピタリと止まった。
「……」
七瀬が隣のクラスの指原湊のことを好きなのは知っていた。