理久side
──懐かしい夢を見た。
とても幸せな夢だ。

七瀬と初めて出会ったのは中学3年の冬。
この学校の試験当日だった。
『寒い…っ』
俺は昔から寒い冬が苦手だった。
手が冷たくなって字を書く手が震えて仕方ない。
だから毎日冬はカイロが必要不可欠だった。
そんな大事な日に寝坊して俺はカイロを忘れてきてしまった。
『字書けるかな?』
これはもう落ちるかもな。
ビューっと強い風が吹いた。
寒っ…!!
はぁ、マフラーも忘れるとか最悪だろ。
カイロならともかくマフラーまでも忘れてしまった。
鞄の横に置いてあったのに…。
『はぁ……』
ため息を吐いた時だった。
どこからか女の声が聞こえた。
『ニャー』
『寒いよね?もう大丈夫だよ!』
俺は声がした方を見た。
そこには1人の女と1匹の猫がいた。
マフラーをまき、手袋をしている女の子。
『私モフモフのタオルがあるの!あれ、モコモコかな?まあどっちも同じか!』