上桐の優しさが嬉しかった。
でも、それと同時に私の胸を苦しめた。

「夏祭りとか久しぶりだなー!七瀬は?」
そう笑って私に聞いてきた上桐。
相変わらず…優しい人。
「私は、毎年来てるよ」
そう答えると上桐は少し嬉しそうにして見えた。
…きっと私を気分転換のために連れてきたんだよね。
『七瀬!夏祭り行こう!』
本当に私の想像を超えてくるんだから。
夏祭り…今日だったんだな。
『七瀬のこと思ってくれるやつはちゃんといるから!』
あれってどういう意味だったのかな?
私は辺りを見渡した。
こんなにたくさんの人が来ている。
ハグれたらおしまいだな。
そう思って前を見るとそこに上桐の姿はなかった。
「上…き、り…?」
心臓がドクンっと嫌な音を立てた。
一瞬にして背筋が冷え、妙な汗が流れる。
嘘、上桐とハグれた?
私は周囲をキョロキョロと見回すが上桐の姿は見当たらなかった。
どうしよう、こんな時にハグれちゃうなんて!