「……わかった。ゆっくり休めよ」
「うん、ありがと…」
お願いだから…私に、優しくなんて…しないで。
上桐に優しくしてもらう権利なんて私には…ない……!
「湊くん……」
ポツリと零す、好きな人の名前。
私は貴方を失ったら何を目標に生きていけばいいの?
貴方の隣に堂々いられる様になりたくて私は努力した。
見知らぬ人にでも笑って取り繕った。
面倒事も引き受けた。
貴方の隣にふさわしい存在でいたいから。
それなのに……。
「全部…無駄になっちゃったな……」
悲しくて苦しいはずなのに…涙は出なくて。
胸も痛くて苦しいはずなのに…何も感じなくて。
ただ…私は失恋してしまったという事実だけ。
あんなに湊くんのことを好きだったのに私って失恋したらこんなものなのかな?
湊くんに出会ったのは中学3年の夏のことだった。

私は行きたい高校もやりたいことも特になかった。
それでも両親に進められて私は塾に通っていた。