─その日は突然やってきた。
たくさんの人がいる中、ある人が私の視界に入った。
私はすぐにその人の名を呼ぶ。
「!…みな…っ!!」
…でも、できなかった。
信じたくないものを見てしまったから。
あれは…湊、くんと…誰?
仲睦まじく楽しそうに歩いている2人の姿が見えた。
会話は聞こえないけどあの後ろ姿は間違いなく湊くんだった。
「う、そ…」
受け入れたくない現実に私は目を背けて走り出した。
……その日の夕飯は食べなかった。
ーコンコンコン。
リズム良く扉をノックする音が聞こえたと思ったらそのすぐ後に上桐の声がした。
「七瀬、飯は食わないのか?それよりずっと部屋の中にいるけど大丈夫か?」
「…っ」
上桐、私失恋したの。
…なんて、そんなこと言えるわけないのに。
私は取り繕った。
「ちょっと食欲ないだけだから!大丈夫だよ!」
なるべく明るく、暗くならないように無理やりにでも笑って言った。
食べる気にならなかった。