(誰?あの人。美人だけど、性格悪そう…)
しかしクロードはなれたようにその手をやわらかく振りほどき、アイルのほうを向き、助けてくれと言わんばかりな顔をした。
するとクロードの視線をたどったセルリアが、ようやくアイルに気づいた。
「あら、ごめんなさい。貴女がいるの、全然気づかなかったものですから」
セルリアは丁寧に言ったものの、その言葉の裏には皮肉がこめられている。
(何?あの態度。むかつくわね!)
「私の名前はアイルっていいます。貴女じゃないです」
「ごめんなさいね?私はセルリア・ローディン。クロードの婚約者です。よろしくね」
(こ、婚約者ぁ!?クロにそんな人がいたなんて…)
「婚約といっても、政略結婚だろ。俺はそんなこと、認めない」
クロードはセルリアを嫌なものを見るような目で見ながら言うと、ため息をついた。
(なーんだ。そうだったんだぁ。)
…あれ?なんで私こんなにホッとしてるんだろ。
鈍感アイルは一生懸命そのことを考えていたが、結局答えは出せなかった。


