私にはもう、朝は来ない。

「失礼します」

引き戸の取っ手に向けていた視線をベッドに向けると、繭は身体中からたくさんの管を近くにある機械に繋げている姿が見えた。

頭には包帯。右の頬には白いガーゼ。左腕にはギブス。

足は布団で隠れて見えなかったが左足も骨折しているとの事だった。

繭の母親から聞いた。

「流花が来てくれて嬉しい。お医者さんからはもう3日も生きられないって言われたから、最後に話したかったんだ」

そう言ってゆっくり口角を上げた。

『最後だから会いたかった?会えて嬉しい?
もし、私があんたが消えることを望んで、あの時手を伸ばさなかった事を言ったら?それでも私に会いたいと思う?』

そんな考えを巡らせながら、

「私も会いたかった」

目から溢れる涙を制服の袖で拭き取りながら繭に言った。涙の意味は分からないけれど。