わたしもそう思ってたところがあったから。



「誰かのために優しくできる陽世くんはすごいと思うの。でも、陽世くんはもっと自分のために行動してもいいんじゃないかな。陽世くんにはもっと自分を大切にしてほしい……です」



あぁ、また余計なこと言っちゃった……。


別にわたしなんかに言われなくても、陽世くんならそれくらいのことわかってるよね。



「ずるいよ――叶琳ちゃん」

「……え?」


「どうして僕の心をどんどん溶かしていくの」


強く……優しくギュッと抱きしめられた。


その瞬間、身体が少し熱を帯びて……心臓がうるさい。


「どうしたら叶琳ちゃんは僕だけのものになる?」


ふわっと甘いバニラの匂い。


陽世くんの温もりに包まれて……今は陽世くんのことで頭の中がいっぱい。


「――夜紘に渡したくない」


「え、あっ……」


唇のほぼ真横にキスが落ちてきた。


陽世くんの顔が間近で、目がしっかり合って。


「叶琳ちゃんと結ばれるのが僕だったらいいのに」


わたしの気持ちは――いま誰に向いてる……?