死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。


そうだ。安心しよう。ここには爽玖くんしかいない。
何手、震えてんだ。
 


「え、えっと、私が思いついたのは」



言いながら、小さな白い丸を書き、横に 自殺方法 と書いた。


これだけ見ると本当に怖いなと感じる。

そして、その下に黒い点をうち、まず 首吊り自殺 と書いた。

お兄ちゃんが好きな、ホラー漫画を思い浮かべる。


「あー首吊り。俺も考えました。」



「うーんあとは?」


一応まだ私の中ではあるのだが、爽玖くんの意見を聞く。


「入水自殺とかはどうでしょう」


「うん、私もそれ考えた」


私はスラスラ書いていく。大きくて濃い、小さい頃から変わらない字だ。

爽玖くんは私の書いている紙に頭を覗かせている。
少し近くて、恥ずかしくて私は椅子をちょっと引く。 

 

「夏菜さん。字、きれいですね」



低い少しカッコいい声が聞こえた。初めて褒められて少し照れる。




「あ、ありがと…!」


小さくお礼を言い、思いつくものを書く。


私は思い出した。

爽玖くんが、私に初めて手紙を書いてくれた日のこと。

あの手紙…きれいな字だった…。



「あ、爽玖くん書く?爽玖くんの方が字、きれいだと思うし、!」



「どっちでもいいです。」


「あ、じゃあ爽玖くん書いて!」

私は、爽玖くんの真顔に耐え、思い切って言う。



「…?はい」



シャーペンを渡し、爽玖くんが受け取る。



「じゃあ俺が思いつくもの書きますね」



爽玖くんはスラスラと書き始めた。

とても小さくて、綺麗で、美しい字だった。

あの時の手紙と同じ字。


爽玖くん…字も綺麗だし、なんでも出来るんだな…。

−こんな才能を沢山持つ人がなぜ自殺なんか…。


思わず字に惚れ込みながら、その疑問を考えていると、爽玖くんが私の視線に気づいた。

手を止め、私の方に顔をあげてくれる。


「俺の字。どうです?」 


ドヤっともしていなく、私をいつもの無表情で見てくる。



「きれい。きれいだと思う」



正直に、本当の気持ち。