死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。



私は真っ白な紙を机に出した。
裏には、大嫌いな英語のプリント。


「え?いいんですかその紙。」


「大丈夫。もうこれ使わないから」

爽玖くんからの相談だ。
私は、聞いてもらってばかりだから、

少し恩返しのようなものをしたい。

なので、怖いけど紙に書き出すことにした。


私が気に入っているシンプルな水色のシャーペンを握る。

「え、えっと、なに、ある?」


初めて私の字を爽玖くんが見る。なんだかそう思い緊張して手汗が出る。



「手、震えてますけど」



「ああいやごめん大丈夫だから!−」


するとペンを持つ右手首を急に掴まれた。


小さくて、細い爽玖くんの綺麗な手が、私の手首を包んでいる。

その手は冷たそうで温かかった。


「緊張、してるんですか?」  


「え、あ、え、いや、べつに」

爽玖くんは変わらず無表情。


「大丈夫。緊張しなくて大丈夫ですから」

爽玖くんは少しニコッとして、手首を爽玖くんは離した。


「あ、あひ、がとう」

ありがとうと言おうとしたのに、おかしくなってしまった。

私は顔が真っ赤になっていると自分でもわかる。

私を安心させるために、手を優しく包んでくれたのかもしれない。