「ってか、夏菜さんの走り、ヤバかったですよ?泣きも声も出さずに走るって。そんなに犬嫌いなのかよってくらい」
爽玖くんが、緑さんの隣に座って犬を撫でていた。
「いやぁ別にそれほどでもないよ」
「いや別に褒めてるんじゃなくて」
また無表情。でも、私には笑って見えた。
「2人共仲いいのね」
ふふっと緑さんが私と爽玖くんを交互に見て言った。
私はどんな表情をすればいいのかわからない。けれど、爽玖くんは、無表情で犬を撫でる。
「犬、好きなの?」
緑さんは爽玖くんに聞いた。
「…いや別に好きじゃないんですけど、
この犬は、なんかかわいいと思って」
好きじゃないって、犬の前で言ってしまうのか。
でも、その言葉の後に、この犬はかわいいという爽玖くんから出た言葉で、犬は嬉しいと思う。
人間の言葉は犬はわからないだろうけど、犬はヘッヘッヘと、嬉しそうに大人しくちょこんと座っている。
爽玖くんも可愛いとか言うんだ。
そりゃあ人間だし言うと思うけど、
いつも無表情で余計なことは言わない爽玖くんが言うのは珍しい。


