おかえりの言葉(短編・完結)

自分を分かってくれさえすればいいのだと美和は迷いのない目で訴えた。


「帰ってあげて下さい」
 

畳に手をついて頭を下げた美和は何と美しかったか。


逃げ続けた自分の愚かさに腹が立った。
 

あの家でたった一人卑怯だったのは自分だ。


妻は家のどこかで見守ってくれているはずの健人を愛しんでいる。


信弘は兄の事が大好きだと全身で言っている。
 

なのに自分だけが、あんなに可愛がってやってたのに、健人が妻と信弘を狂わせたと恨んでいた。


健人を愛していた気持ちをどこかに追いやってしまっていた。