おかえりの言葉(短編・完結)

恋人だと認識してくれない信弘の前で彼女は何度泣いただろう。


どうやったら自分を分かってくれるのだろうかと美和は苦しんでいた。
 

どうやったら二人幸せになれるのだろうと。
 

別れて自分の幸せを見つけたらどうだと言った時、彼女はイヤだと言った。


世間で『おかしい』と気味悪がられる信弘の病気を美和は、優しい人だからだと言った。
 

大好きだった人が死んでつらくないわけがない。


家に帰れば「おかえり」「ただいま」と言ってくれた人がいなくなった事を信じられないのは悪い事じゃない。


爆発で意識がなくなる寸前まで元気だった人が死んだと言われてウソだと思うのはしかたがない。
 

一生、信弘が健人と話し続けたっていい。