おかえりの言葉(短編・完結)






今度こそと意を決して帰ってきたが、やはり妻と息子は未だにあれの事が忘れられないようだ。


ただ二人の違いは一人にはあれが見えて、もう一人には感じるだけという事。
 

十年前の結婚記念日、みんなで祝おうと土鍋に火をつけた健人がケータイ用コンロの爆発で死んだ。


その部屋にいて爆発に巻き込まれた信弘は一命を取り留めたが、健人の遺体を見る事が出来なかったために死んだと信じなかった。