おかえりの言葉(短編・完結)

はき捨てる信弘に父は、


「優しい人なんだよ」


と言って鍋から肉じゃがをよそってくれた。
 

父が突然、いなくなるようになったのはいつからだろう。
 

幼かった頃は会社に行く以外はいつも家にいたと思う。


十五歳の時、信弘は大怪我をして長い間病院で目を覚まさなかった事があった。
 

帰ってきた信弘を見る父の悲しそうな目が印象的だった。