おかえりの言葉(短編・完結)

今はまだ恋人が欲しいとは思わない。


家族と一緒にいる方がずっと楽しい。


そんな自分をかわいそうとは思わない。
 

みんなが必ずただいまと言って帰ってくる。


それだけでいいじゃないか。


それがどんなに素晴らしい事か分からないのか。


「さっき美和ちゃんに会ったよ」
 

食器を中途半端に父は信弘の前に座った。


「心配してた」
 

ここに帰ってくる前に美和に会って、今、健人が家にいないという事は健人のデートの相手は美和じゃないようだ。


遊び人の恋人の動向をさぐるために家の周りをうろついていたのだろう。