おかえりの言葉(短編・完結)

また眠っていたようで、父が食べ終わった食事の残骸をシンクに運んでいるのが見えた。


起こしてくれてもいいのに。
 

表はすっかり暗く、時計を見ると九時をまわっていた。


「健ちゃんは?」


「いないよ。帰ってくるわけがない」


「デートだもんね」
 

目をこする信弘を父は笑って見ている。


「お前はデートとかないのか?」


「ないよ。興味ないし」


「かわいそうに」