恋人が泣いていたと聞いても理由を聞いてこない兄を見ながら、信弘は床の下に少し見えている地面に手を伸ばした。


触れそうな気がしたけど、無造作にでっぱった木に邪魔されて後ちょっとの所で手はとまった。


「あいつが泣くたびに心配してたら身が持たないよ」
 

そう言って建人はあくびをかみ殺している。
 

抜けた床から入ってくる冷たい空気が服の隙間から入ってきて鳥肌がたった。


本格的な冬がくるまでに直してもらわないと、と思いつつ、おもしろいからこのままでもいいかと信弘は思っていた。
 

空気はこんなに冷たいのに、窓から差し込む日の光は直視できないくらい眩しくて痛い。